プロローグ:「生徒が動かない」のは、大人の話が退屈だからかもしれない
「進路が決まらない」「働くことへの意欲が低い」。進路多様校の現場で、多くの先生方が抱える悩みです。
しかし、それは生徒のせいだけではありません。大人が一方的に自社の条件をアピールする「よくある企業説明会」が、彼らの心を動かせていないからかもしれないのです。
都立高校の3年生139名を対象に、トモニコが6月に仕掛けた特別ワークショップ。
そこでは、従来の高卒採用の常識を覆す「1社90分間、徹底的に生徒と対話する」という異例のルールが設定されました。
結果として、139名中47名(約3分の1)が「実際の職場を見学したい」「個別面談に進みたい」と自ら具体的なアクションを起こすという、驚異的な成果を生み出しました。
教室で一体何が起きたのか。その全貌を公開します。
1. 【準備】「丸腰」では挑ませない。プロからの挑戦状
トモニコのプログラムは、当日いきなり企業と生徒を対面させることはしません。
ゴールデンウィークの期間中、生徒たちには「トモニコ・ワーク(事前課題)」が配られました。それは、自分自身の「持ち物(強み)」を言葉にするワークと、企業からの「質問予報」です。

【企業からの実際の問い(抜粋)】
「夜勤で確実に遅刻しそうになった時、誰に・どうやって・何を伝える?」
「自分を『動物』に例えるなら何? その理由は?」
正解のない実践的な問いに対し、生徒たちは悩みながら「自分なりの言葉の武器」を準備し、本番を迎えました。
2. 【Day1】アピールは3分だけ。名指しで語られる「本音の対話」
6月10日、いよいよ企業との対面です。企業から全体へのアピールはわずか3分間だけ。その後のブースでは、企業の自慢話ではなく、人事担当者の「リアルな失敗談」からスタートしました。
そして始まったのは、生徒が準備してきた「質問予報シート」に対するリアルタイムのフィードバックです。今回参画したWILLER EXPRESS様、エムアイフードスタイル様、木下の介護様、カンダリテールサポート様、アルファジアグループ様の担当者たちは、採用担当者ではなく「業界の専門家(先生)」として、愛のある指摘と的確なアドバイスを返しました。
その真剣な向き合い方は、初日で早くも生徒たちの心に深く突き刺さります。
【Day1:生徒と企業の本気のやり取り】
WILLER EXPRESSのブースにて
生徒の声
- WILLER EXPRESSさんの方がものすごく印象的で、質問の応答に対してすごく肯定的な意見を話してくれて、周りを楽にさせてくれる話しやすい方だと感じました。
- 根拠を持って話そう、自分の経験談を織り交ぜて話そうというアドバイスを貰った。元々自分が苦手だと思ってたことをピンポイントに言われたので改めて自分の弱点を知ることができていい時間を過ごせた。
- 誠意とはなにか聞かれた時にすぐ答えることができなかったけど、優しく教えてくれて自分の中の答えを見つけられました。
木下の介護のブースにて
生徒の声
- 『介護職で大切なことは?』という質問で私が回答したときに『完璧、ぜひ来て欲しい』と言われて、すごく嬉しかったし自信になりました。
- 失敗するのは当たり前だから迷わずに進んでみてって言ってくれたのがすごい勇気貰えた。
- なぜ介護業界の仕事についたかをお話してくださった時の一つが、自分のお母さんやお父さんに親孝行を出来るからとおっしゃっていた所が自分も他人事ではないので印象にのこっています。
3. 【空白の1週間】成長を仕掛ける、水面下の「三位一体」
Day1が終わり、生徒たちの心に火が灯った瞬間を、トモニコは逃しませんでした。ここからDay2(6月17日)までの1週間、学校・企業・トモニコの3者が水面下で連動し、生徒の「さらなる成長」の導線を設計しました。
トモニコの動き:企業へのフィードバックと「先生の要望」の伝達
トモニコはDay1終了直後に生徒たちのリアルな感想や課題感をすべて回収・分析。参画企業の人事担当者へ即座に共有しました。「学校の先生方からは、受験本番に向けて、もう一段大きな声で指導してほしいというご要望をいただいています」と生の声を伝達。企業側がDay2でより解像度高くアプローチできるよう事前に伴走しました。
学校(先生方)の動き:日常の教室での「振り返り」と準備の声かけ
進路指導部の先生方は、日常の教室内で生徒たちへ温かい声かけを継続。「Day2では同じ大人たちが、みんながどれだけ準備してきたかを楽しみに待っているよ」と事前指導を徹底。生徒たちが自己PRやエピソードをさらにブラッシュアップして2週目に臨めるよう、背中を押し続けました。

4. 【Day2】再挑戦と進化。大人の「承認」が着火剤になる
6月17日、Day2。ブースには10日と【全く同じ生徒】が着席します。
1週間の準備を経て、生徒たちは見違えるほどの熱量で「再挑戦」に挑みました。
企業側も、トモニコから共有された情報と手元のカルテを見比べながら、生徒の「修正力」と「成長」を評価します。エムアイフードスタイル様のブースでは、企業の担当者の言葉を胸に刻んだ生徒が確かな変化を見せました。
【Day2:大人の言葉を力に変えた生徒たち】
エムアイフードスタイルのブースにて

- エムアイフードスタイルの東さんが言っていた『あいてとのコミュニケーション能力』を大事にしようと思った。
- 先週もらったアドバイスを活かして、前より落ち着いて話すことができました。相手の目を見て話すことや、笑顔で受け答えすることを意識しました。自分の考えをしっかり伝えることができ、褒めてもらえてうれしかったです。
- 前回は端的に話しすぎてたけど今回は前回言われたことを考えながら、もっと詳しく自分がなぜそう思うのかを話せた。
カンダリテールサポートのブースにて

- 2週にわたって同じ企業の大人の方と深く対話したことで、その業界の仕事内容だけでなく、働く方々の人柄の温かさや仕事へのプライドにも強く惹かれるようになりました。
- 前回頂いたアドバイスをしっかり理解して実践してみたら、すごくわかりやすいと褒められた。
- 面接の時に変に萎縮したりせずに堂々と自分のことを伝えることが大切だとしれた。
アルファジアグループのブースにて

- 自分が考えた回答を完璧と言ってくださったので自信に繋がった、初めの印象が半分以上なので身なりや座り方目線なども気をつけるといいと聞けてよかった。
- 自分のことばを相手に伝わりやすいようにまとめて伝えることが課題だとわかった。
- 意外とラフな感じでも大丈夫と言われて自分らしさがより伝えられそうでよかったです。
ただの「面接練習」が、大人からの本気の「承認の場」に変わった瞬間。生徒の表情は、たった2週間で見違えるほど頼もしい顔つきへと変貌を遂げていました。
5. そして、139名の3分の1が自ら動き出した
2日間にわたるワークショップがすべて終了した後のアンケート。
「この企業をもっと知りたい」「職場見学に行きたい」と具体的な選考・面談の希望を出した生徒は、実に47名に上りました。
彼らを動かしたのは、立派なパンフレットでも、待遇の条件でもありません。
「自分の話を真剣に聞き、1週間での変化を一緒に喜んでくれた、あの魅力的な大人たちと一緒に働いてみたい」という、極めて純粋で前向きな意思でした。
エピローグ:教室と社会の境界線を溶かす
【学校の先生方へ】
生徒に「働くことのリアル」を教えるのに、綺麗事は必要ありません。本物の大人と向き合い、自ら準備し、改善した言葉が社会に通じる喜びを知ること。それこそが、生徒の意欲を内発的に引き出す実践的なキャリア教育です。トモニコは、日常の先生方の指導に寄り添い、共に生徒の背中を押すパートナーです。
【企業の皆様へ】
高卒採用は「求人票を出して待つ」時代から、「教育に参画し、学校と連携しながら生徒と共に育つ」時代へと変わりました。最初から採用(リクルーティング)を目的に掲げるのではなく、教育的アプローチで伴走することが、結果として最も強固な採用成果(ファン化)に繋がります。
トモニコはこれからも、学校と企業の間に立ち、嘘のない「本気の対話」で、教室と社会の境界線を溶かしていきます。
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